~光で世界観と感情を描き分ける技術~
こんにちは、日本コーバン舞台照明事業部です。
今回は、舞台照明における2つの重要なキーワード、**「Atmosphere(アトモスフィア)」と「Mood(ムード)」**について詳しく解説します。
照明をデザインする際、「このシーンの雰囲気って何だろう?」と考えることは多いはず。でも、その“雰囲気”は「世界観」なのか、「キャラクターの心情」なのか、正確に分けて考えられていますか?
実は、この2つを明確に理解し、使い分けることで、より深みのある舞台表現が可能になります。


🔍 AtmosphereとMoodの違いとは?
項目 | Atmosphere(アトモスフィア) | Mood(ムード) |
---|---|---|
定義 | 空間全体に漂う「世界観」や「状況の空気感」 | 登場人物の「感情」や「心理状態の雰囲気」 |
焦点 | 客観的・外的な要素(場所・時間・社会的背景) | 主観的・内的な要素(キャラクターの心情) |
照明の役割 | 時間帯、天候、時代背景を演出する | 怒り、悲しみ、喜びなどを色や明暗で表現する |
使用例 | 霧がかった夜のロンドン、灼熱の戦場など | 怒りで真っ赤に照らされた顔、悲しみで沈んだ青 |
観客の受け取り | 「このシーンの世界はこういう場所なんだ」 | 「このキャラは今、こういう気持ちなんだ」 |
💡 実践的な使い分け:『ロミオとジュリエット』を例に
シェイクスピアの代表作『ロミオとジュリエット』でも、AtmosphereとMoodは明確に分けて使われます。
- Atmosphere
ヴェローナの町に広がる重苦しい政治的緊張感
→ 灰色がかった低照度、ハードな影で張り詰めた空気を演出。 - Mood
ジュリエットがロミオを失った悲しみ
→ ソフトな青や冷たい白で内面的な静けさと孤独を表現。


このように、外側の世界と内側の感情、それぞれを光で丁寧に分けて設計することが、印象に残る舞台照明を生み出します。
🎨 デザイン面での応用
目的 | 使用色 | ライトの質感 | トランジション |
---|---|---|---|
Atmosphere | 自然光に近い色温度(CTO/CTB) | ハード or ソフトの使い分け | ゆるやかな変化 |
Mood | 高彩度の色(赤、青、緑など) | 拡散光やコントラスト重視 | 急激な変化で感情を強調 |
色選びだけでなく、ライトの質感(シャープさ/柔らかさ)やフェードのスピードも大切な要素です。Moodのシーンでは一瞬で色を切り替えることで、観客の感情に直接訴える演出が可能になります。
✨ まとめ:AtmosphereとMood、どちらも大切な要素
- Atmosphere = 「そのシーンの“世界”」をつくる照明
- Mood = 「その瞬間の“感情”」を伝える照明
どちらか一方だけでは、舞台は“平面的”な印象になってしまいます。
照明デザインは、(時には)Atmosphere(外側)で物語を包み込み、Mood(内側)で観客の心を揺さぶるものです。
今後の照明プランを考える際は、ぜひこの2つの視点を意識してみてください。
日本コーバンでは、こうした舞台照明に関する知識や技術を、今後もブログやセミナーを通して発信してまいります。
それでは、また次回の更新をお楽しみに!