舞台照明のプログラミングを学ぶ上で避けて通れない概念が**トラッキング(Tracking)とキューオンリー(Q Only)**です。 これらを理解することで、ムービングライトを使ったショープログラミングが格段にスムーズになります。
この記事では、トラッキングとキューオンリーの違いを、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
1. トラッキングとは?
【昔の照明卓とトラッキングの誕生】
かつての照明卓では、「キューオンリー」の考え方しかなく、フェーダーを操作して照明を作り、それをキューとして記録するのが一般的でした。
しかし、ムービングライトの登場により、1台の灯体が持つ**多数のパラメーター(DMXアドレス)**の管理が必要になり、プログラミングの負担が増大。
これを効率化するために生まれたのが「トラッキング」の概念です。
【トラッキングの仕組み】
トラッキングとは、一度記録したキューのデータが、次のキューにも自動的に引き継がれる仕組みのことです。
例を見てみましょう:
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- Spot1はCue1で設定した値がCue4までそのまま引き継がれる
- Spot2はCue1とCue2までは変わらず、Cue3で★に変更すると、それ以降のCue4にも反映される
このように、変更があるまでデータが前のキューから受け継がれるのがトラッキングの特徴です。
【トラッキングのメリット】
✅ すべてのキューに対して個別に設定しなくても済む
✅ 作業時間の短縮
✅ ムービングライトの動作をスムーズに制御可能
しかし、意図しないデータが次のキューに引き継がれる可能性があるため、調整が必要な場面もあります。
2. キューオンリー(Q Only)とは?
キューオンリーは、選択したキューだけにデータを記録する方法です。
トラッキングでは前のキューのデータが自動で引き継がれましたが、キューオンリーでは各キューが個別に設定され、前後のキューに影響を与えません。
【キューオンリーの仕組み】
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- Cue3でSpot2(★)を変更しても、それ以前のキューには影響しない
【キューオンリーのメリット】
✅ 特定のキューだけを変更できる
✅ 他のキューに影響を与えずに修正可能
✅ ショー中の微調整がしやすい
特定の場面だけを修正したい場合に便利ですが、キューごとにすべてのデータを記録する必要があるため、作業量が増えるデメリットもあります。
3. トラッキングとキューオンリー、どちらを使うべき?
それぞれの特徴を整理すると、以下のようになります。
トラッキング | キューオンリー | |
データの引き継ぎ | 変更があるまで引き継ぐ | キューごとに記録 |
作業効率 | 高い | 低い(設定が増える) |
調整のしやすさ | 修正時に注意が必要 | 影響範囲を限定できる |
向いている場面 | 一連の流れがあるシーン | 特定のシーンのみ変更したいとき |
一般的なショープログラミングでは、トラッキングを基本として使用し、 「この場面だけ特別に変えたい!」という場合にキューオンリーを使うのがオススメです。
4. まとめ
今回は、 ✅ トラッキングの仕組みとメリット ✅ キューオンリーとの違い ✅ どちらを使うべきか について解説しました。
どちらの方法も、舞台照明プログラミングには欠かせない技術です。 ぜひ実際にコンソールを触りながら、両者の違いを体験してみてください!